チェココルナに混迷の予感【フィスコ・コラム】
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今年春先に行われたフランス大統領選で中道候補が勝ち、ヨーロッパはまだ民主的との印象を与えました。しかし、最近のドイツやオーストリアの選挙をみると、極右政党が政権入りし影響力を強めています。あまり注目されなかったものの、チェコはその典型といえるかもしれません。
10月20-21日に行われたチェコ下院選(定数200)は波乱となりました。ソボトカ首相が所属する中道左派の社会民主党は下位に転落し、元財務相のバビシュ氏率いる中道のANO2011が第2党から第1党に躍進。中道右派の市民民主党は第2党、また反欧州連合(EU)を掲げていた日系のオカムラ氏率いる極右の「自由と直接民主主義」が第4党となりました。バビシュ氏はこれらの政党による連立政権を近く発足する見通しです。
バビシュ氏は、財務相在任中、自身が運営する企業の起債に関連したことなどを理由に解任された経緯があります。その後、側近を後任に指名したものの、ソボトカ首相にそれも却下されるなど、次期政権をにらんだ権力争いに発展します。バビシュ氏は、チェコ有数の実業家としても知られており、財務相を退任した後は主にビジネスに軸足を置いた自身の政策をまとめた本を出版するなど、首相就任に意欲を示していました。
来年1月の大統領選で再選を目指すゼマン大統領は、バビシュ氏に組閣を命じるとともに、排外主義的な主張で脚光を浴びるオカムラ氏を重用するよう提案しています。仮にオカムラ氏が大統領選に出馬するとなると、ゼマン氏は極右支持層を奪われ不利になるとみられるためです。「バビシュ政権」発足で大統領選への国民の関心を逸らす陽動作戦で、ゼマン大統領は自身の権力保持を目論んでいるようです。
こうしたポピュリズムを絵に描いたような政治情勢は、いずれ通貨コルナのリスク要因になるでしょう。チェコ国立銀行(中銀)は今年4月、コルナの対ユーロでの上昇を制限するデフレ回避の政策を廃止したことで、コルナ相場は1ドル=25.50コルナから21.50コルナまで値を切り上げました。ただ、バビシュ氏の汚職疑惑など政治情勢の混乱が嫌気され、足元では22コルナ付近まで弱含んでいます。
チェコ経済は確かに成長を維持しています。10月3日に発表された4-6月期国内総生産(GDP)は前年比+4.7%の高水準となりました。消費者物価指数(CPI)は昨年末から前年比+2%以上の伸びを保っており、10月9日の9月CPIは+2.7%に上昇、同失業率は3.8%に低下しています。チェコ中銀は8月3日に開催した定例会合で、景気拡大を背景に4年9カ月ぶりに政策金利を引き上げ、0.25%としました。
しかし、ゼマン大統領が自身の権力保持のために、オカムラ氏の持論である国民投票を認める意向を示すなど、チェコの政治システムの変更の可能性まで出てきました。EU構成国の離脱劇はイギリスの国民投票後、あまりの複雑さから下火になったように見えましたが、実は収束してはいないことがわかります。チェコも、指導者が移民問題を利用して閉塞感を煽るハンガリーやポーランドと同じ道を歩み始めたようです。
「吉池 威」
<MT>
2017/11/05 10:43:06